道具としての完璧さを求めてルアーを製作する際に最も重要なのは、安定したバランスを前提とした均整のとれた形状の再現性。
　職業ルアービルダーとしては「ハンドメイドなのでバラ付きは仕方がない」ということを当たり前にはしたくない。
　素材の状況を判断し、左右の重量と形状のバランスをいかにして均一に整えることが出来るかどうかが、プロビルダーとアマチュアビルダーの最大の違いであり、現在活躍しているトップビルダーの作品を見れば、個体差の少なさを顕著に窺い知ることが出来る。

　しかし、パーフェクトなバランスを追求していくと、その「対極」にある存在に気付く。
　バランスの取れていない状態を、意図的に生み出してバランスさせるという…　半ば製作者のエゴイズムが生み出した世界。
　世の中に「イレギュラーアクション」を謳うルアーは数限りなく存在するが、コントロール出来ない厄介な動きを「イレギュラーアクション」と呼んでいるだけのものも多い。支配下に置けないようなアクションのルアーでの釣果は所詮は偶然の産物でしかない。
　バランスを崩した変則的な動きをアングラーの手腕で確実に制御できる究極のセッティング。
　ペンシルベイトを「乗りこなす」楽しさ。それが「鎬 Shinogi 105」の提案です。

上下左右全てが異なる曲面で構成される「鎬 Shinogi 105」は、変則的なアクションが特徴です。
　アングラー側から見て右側に背中を、左側にお腹を向けて横たわる水平浮きに近い姿勢から、左右に異なるアプローチのアクションを見せます。
　軽いトゥイッチで右サイド(背中側)に流れるようなスライドターン、そして左サイドにはしっかり水を押してテールでスプラッシュを生み出す強めのアクション。
　左サイドターンの後にラインスラックを出すことで切り返しの右スライドを連結したり、水面を撫でるような僅かな風に揺られて右回転させたり…
　様々なアクションの要素を盛り込んだテクニカルペンシル「鎬 Shinogi 105」には、使い込む度に新たな発見があります。